05年7月に書いた話。
唐突ですが、僧侶の視点から一つ。
あの世(死後の世界)は有るのか無いのか。
証明されてもいない“あの世”などと云うものを信じるのは、愚かだとする考えも聞きます。
“あの世”が有るか無いかについて、私自身がどう考えているかは取り敢えず置いといた上で、
「“あの世”は無ければならない」 と言わせてもらいます。
「“あの世”なんて無い。人は死んだら消滅する。無くなるのだ」
と、いう考え方は、ある意味達観だとは思います。
が、例えば癌で余命幾ばくも無い人に向かって、貴方はそれを言えますか?
「死ぬのが怖い」 と泣いているその人に、それを言えますか?
子供を残して逝かなければならない人に対して、
「人は死んだら終わり。“あの世”から見守ってやる事なんて出来ない。そんなのおとぎ話だよ」
と、言えますか?
死に逝く当人だけでなく、残される家族に向かって
「人は死んだら消滅するんだ。何処にも居なくなるんだ」 と言えますか?
言えないからこそ、「あなたのお母さんは天国に行ったのよ。あなた達をちゃんと見守ってくれているのよ」
と言うのではありませんか?
同じく、子供を亡くした親に向かって、
「“あの世”なんておとぎ話。あなたの子供はもうどこにも居ないのです」 と言えますか?
貴方がそう言われたとしたら、どうですか?
人は、そんなに強くはないのです。
“あの世”とは、無ければならないものなのです。
私はそう思います。