独り善がりな話。

クチの悪いファンクラブのお友達(笑)は、あたしに、
「アンタはピアノが好きなんじゃない!高木里代子さんが好きなだけだ!」
などと言うのです。

否定しません。
ええ、全く否定の余地はありません。

ですが一つ、私の話も聞いて下さいよ。

 


あたし、実は元々ピアノ演奏は嫌いじゃないの。
というか、好きなの。
勿論、自分じゃ弾けない。音楽の詳しい事は分かんない。

良く解らないなりに、ピアノ演奏のCDは幾つか聴いた。
“この人の・この曲は好き”とかはあるけど、追いかける程に好きな演奏家はいなかったの。

 

・・・あたしね。
一回りほど年齢の離れた友人がいて、その人がピアノを弾いてたの。
あたしが30過ぎの頃。その人がちょっとこぼしたの。
「持ってるピアノの、鍵盤が足りない」
って。
「足りないって・・・出せない音はどうしてるの?」
と聞いたら、
「足りない音は頭の中で奏でてる」。


そのお宅は母子家庭で、経済的な余裕が余りなかった。
“鍵盤が足りない・・・?どうしたらいいのかしら?”
って、あたしも悩んだ。

名案が浮かんだ。
“何のことはない、あたしが買ったげれば問題解決じゃない!?”

当人にはすごく遠慮されたけど、
その人の師匠に薦められたピアノを買いに行った。
あたし、無駄遣いしないタチだったから、その位は出してあげられた。

 

その何年か後。
「ピアノのお礼に、Cさんだけを観客に弾かせて欲しい。会場は押さえたから」
と、誘ってくれた。
「運転手もするから、飲んでいいよ」
ですって。

その予定されていた日。
あの大地震が起きた。

 

あれから11年。
「約束が果たせなくてごめんなさい。仕事でピアノを弾く暇さえなくて」
と、詫びられております。

詫びなくて良いじゃん(笑)。
君が自立して、一人で生計を立てられているだけで、君の親御さんは喜んでいると思うよ。

 

さ、ってな訳で。
あたしは、ピアノに興味がない訳じゃない。
演奏が、嫌いな訳でもない。

ただこれまで、好きになれるピアニストに出会わなかった。というだけ。
それだけだわ。

 

 

【蛇足的追記として】
ピアノ、という楽器の音が好きじゃなければ、そんな事、しないわよー。
あたしは何一つ、その対価に望んでもいない。
ただ友人が、好きなピアノを思い切り弾けたらいいな、と思ったの。それだけ。